従業員専用入口を経て今日もアルバイト先へと向かう。
ひとりバックヤードで黙々と制服に着替え、出勤時間ギリギリまでイヤフォンをしながら、これからの憂鬱な労働を想う。
出勤時間になり店頭に立つ。
手を洗い何をするでもなく、手持ち無沙汰の態でいると、あるパートのおばちゃんが話しかけてくる。彼女は俺が以前勤めていたバイト先で一緒に働いていたのだ。そういうワケに加え、彼女の接しやすい穏やかな性格も相まって、俺は俺なりに親しくしていた。
そのとき、彼女がもう少しすればここを辞めて他のバイト先だかパート先だかに移るということをコソッと教えてくれた。
「えっ、なんでなんですか?!」と心底からの驚きを露わに訊くと、「もっと時給のいい仕事に就こうと思って。」とのなんともありふれた理由。
俺は少し悲しかった。財布にあと3000円あると思い、確認してみたら2450円しかなかったときくらい、悲しかった。
彼女は先述した以前の俺と彼女の共通のバイト先で、何故かは知らぬが店長含め社員やらバイト連中に嫌われていた。そして、今回の転職。俺が知るだけで計2回の転職。その2つの要素が俺自身の社会からのはぐれっぷりやバイト先の転々ぶりと重なり、彼女に対して、さらなるインチメートな気を起こさせる。
さいなら、加山さん。お互い、苦労は多いと思うけどテキトーにがんばろーぜ。
ってなことも所詮数時間後にはすっかり忘れて閉店時間を今か今かと待ち、退勤後のみじめな、それでも今の自分にとっては少なからずある種の逃げ道かつ慰めとなり得ている晩酌を想うだけの、どこまでも''自分さえよければオールオーケー''な独りよがりの青年へと成り下がるのでした。ちゃんちゃんっ。
2 FACE feat.BES / NORIKIYO