場面は安木が友人である加賀に借銭を受け取るところから始まる。 そもそもその日、安木は父親のコネで日雇いの土方仕事に赴く予定であった。よってその前日は早い時間から布団に入り、眠ろうとした。が、平生、陽が昇る時間帯に眠り、陽が暮れる頃合いに目が…

三津田はその日、アルバイトの面接を１件済ました後、木元との待ち合わせの場所へと向かった。それは煙草屋の前で、そこにはベンチと灰皿が置いてある。両者、喫煙嗜好の身であるだけにうってつけの集合場所なのだ。 三津田がベンチで煙草を吸っていると、木…

安木は音楽志望であった。 正確に云えば、現在もそうなのであろうが今はその種の活動は全くしていない。 15の時分からそれを志すようになり、活動に精を出そうとしたが、結局思い通りの活動をできた試しは一度足りとも無かった。 その期間ごとにそれぞれ因が…

まだ昼の２時だった。いつもの通り、手持ち無沙汰であった。芳田は職も芸も持っちゃいない。一日が長かった。ここ３、４日の記憶を辿ってもほとんど思い出せない。 平成も終わろうとしている現在、彼は若者であった。周りの連中は大学を出て立派に働きに出て…